医学書院で刊行している週刊医学界新聞に「これからの在宅看護学研究と教育への期待」と題して寄稿したものが掲載されました。
これまでの共同研究や科研での研究成果を踏まえて、研究の動向や、政策的な研究へのGISの導入、既存の統計データの活用などについて述べさせてもらいましたが、若干字数が不足し、教育についてはあまり触れられなかった点と、説明足らずになっているものもあるかと思います。まだ、論文化できていないものは、これから論文を書いて補足していこうと思います。
医学書院で刊行している週刊医学界新聞に「これからの在宅看護学研究と教育への期待」と題して寄稿したものが掲載されました。
これまでの共同研究や科研での研究成果を踏まえて、研究の動向や、政策的な研究へのGISの導入、既存の統計データの活用などについて述べさせてもらいましたが、若干字数が不足し、教育についてはあまり触れられなかった点と、説明足らずになっているものもあるかと思います。まだ、論文化できていないものは、これから論文を書いて補足していこうと思います。
12月初めに開催された第8回日本在宅看護学会学術集会で、担当した教育セミナー「学会誌への論文投稿の準備と査読への対応」の資料を一部修正したものを添付しました。この後、研修委員会の皆様と、e-learningにもっていく予定なので、前向きなご意見等をいただけると幸いです。
私も論文投稿しなければ。
12月末に日本看護協会出版会から、訪問看護基本テキストの各論編が発売されます。
既刊の総論編の内容がかなり重厚なので、来年からの授業に向けて、他の先生方が執筆されたところを楽しみに読みたいと思います。
私の担当は、なんと「コミュニケーション技術」でして、実際の良質なコミュニケーションが苦手な私には、前回の「病院からはじまる在宅看取りケア」のエンゼルケアに引き続き、得意分野とはいえない内容ですが、基本的な概念の整理とそれぞれの場面の例示をしています。
領域会議で自分の発表の機会があり、論文のクリティークとして、以下の論文を紹介しました。
論文を選んだ理由としては、以下のようなものがあります。
論文はオープンアクセスなので、内容については読んでいただければと思いますが、気になったところとすれば、1.の観点からはデータの突合だったり、項目やサンプルの使える・使えないの峻別が大変なことが垣間見えます。既存のデータからわかることしか言えないので、今回だと併存症の中での重症度や合併症の有無などはわかりません。分析をするには、それなりの技術がいりそうですね。
2.の観点から言うと、一般線形モデルのマルチレベル分析[1]個人的には、日本語だとこの論文(筒井淳也、不破麻紀子:マルチレベル・モデルの考え方と実践、理論と方法、23(2)、139-149,2008) … Continue readingの論文は読んだことがありましたが、ロジスティック回帰でも基本的な考え方は同じのようですね。今回はfacility unit間での関連性を顧慮してモデルの選択をして、level 2にはrandam interceptのみを投入したモデルにしています。ちなみに千葉県の人口40万人ぐらいの市のデータということで、私の推測正しければ、現時点で特養が24か所、老健が8か所でした。あとこの固定効果の値をオッズ比と呼んでもよいのか、確認しよう。
考察では、「特養では2つ以上の既往歴があるとNon-potentially aboidable hospitalizations が増えるのに対し、老健では、Potentially aboidable hospitalizations が減少する」という相反するような現象について、定期的に治療や処方ができる常駐の医師がいるという特性の違いによるものと述べられています。その他にも理由を説明しながら慎重な解釈が必要とされているのですが、老健であれば看護師も多いので、医師の治療とともに合併症に合わせた予防的な介入が行われたりしているのかなとも思いました。
Limitationでも指摘されていますが、高齢者の心身状態や施設利用のしかたが多様化している中で、どのくらいの期間、どのような時期のデータを用いるのが代表性を持った結果といえるのかは結構大事だということを再確認したのと、PAHの理由として呼吸器合併症や泌尿器合併症が多いということがデータでも明確に示されたので、今後は予防的なケアの質とも絡めたり、医療費・介護費の縮減にどうつなげていくのかといった方向に進むのかなと思いました。
勉強になりました。
Notes
↑1 | 個人的には、日本語だとこの論文(筒井淳也、不破麻紀子:マルチレベル・モデルの考え方と実践、理論と方法、23(2)、139-149,2008) の解説がわかりやすく気に入っています。 |
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昨日は、移動の時間が多かったので、一度流し読みはしていた孫大輔先生の「対話する医療 ―人間全体を診て癒すために」を読み直しました。
本書の構成は第1章で家庭医や総合診療医の人間観と対話の必要性をエピソードを交えながら紹介し、第2章では、医療コミュニケーションにおける様々な話題を医療社会学や哲学的な観点を交え紹介しつつ、オープンダイアローグのように対話がもたらす治療的な側面が示されており、本書の概念的なコアの部分だと感じました。
第3章では、少し「対話」から離れて視野を広げ、健康の社会的決定要因の説明やパウロ・フレイレの教育活動を通じて、人と社会とのつながりが健康等に与える影響を示しながら、身近な谷根千での活動などが紹介されます。そして最後の第4章では、これまでの内容を受けて、これからの医学教育が目指すものを示された上で演劇の活用など新たな取組を示し、対話型の医学教育の必要性を唱えて閉じます。
内容をあまり書いてしまうとネタバレになってしまいますが、保健医療社会学を大学院で学んでいた私にとっては、「患者中心の医療」「エンパワメント」「健康生成論」など馴染み深い概念が多く、丁寧に読んだつもりですが一気に読み終えてしまいました。それらに詳しくない方でも例示が豊富なので、内容の理解は容易にできるかと思います。
この本はどのような性格の本なのだろうかと考えると、医学教育の教科書ではないし、専門的な内容がふんだんに織り込まれたエッセイという感じでもあります。基本的には「医学教育」に向っていく書籍でもあり、関心を持って手に取るのは医学生や初期研修医で、まえがきに書かれているほどは一般の方が読む書籍とは言えないのかとも思います。
ただし著者の学識の広さ(看護学でも学位を取得)によるものと思いますが、医師・医学生以外にも十分に親和性を有した内容と筆致です。患者に「寄り添い」「共感」することを得意にしている看護職も多いと思いますが、読んでみると「あっ、ここは知らなかった…」とか「そうだったんだ~!」みたいな振り返りが得られる内容が満載だと思います。