CNS看護学会参加記

13日に開催された第2回日本CNS看護学会に初参加してきました。

中身がどんなものなのか、よくわからないまま参加しましたが、会長講演や基調講演など含めてCNSの領域でも地域包括ケアを意識した内容になっているということ、つまり専門病院で、複雑な医療から引き出された複雑な看護上の問題に対応するCNSの活動とは別に、地域で各分野のCNSが活動することが意識化されていたところは非常に印象に残りました。

僕が関心を持ったのは小児看護CNSの方のNICU児の退院支援に向けた活動で、退院支援の標準化・質の保証絡みでの院内の仕組みの改善や地域へのアウトリーチもあったりして、CNSの質の高い活動がとても良く伝わるものでした。

あとは、CNSに会おう!とか、CNS養成の大学院の紹介コーナーもあったりして、色々な方にお会いすることができました。たまたまいらした家族支援CNSの方にはCNS認定後の能力形成について懇談ができ、家族看護学会の事例検討がとても勉強になっているというお話しだったので、やはり在宅看護についてもそういう場が必要かな?

あと現在上智大におられる渡邊知映さんにも、久しぶりにお会いしました。講演のテーマがCNS活動の質の評価・診療報酬につなげる内容だったのですが、個々のCNSの自分の活動の意識化が第一歩という話には納得しつつも、やはり大規模なデータベースでも作らないとなかなか難しいのではないかといった話をしているうちに次のセッションの時間になってしまいました。

学会については、会場が縦に分散していたので、移動が大変だったということと、一部の演題発表の会場が狭く、かつ企業展示と一緒だったりしたので、その辺は改善の余地があるような感じでしたが、色々普段見られないものを見る、会えない人にお会いできたという点ではサバティカル的にも参加してよかったように思います。

首都圏の高齢化問題と高齢者の転出

日本創生会議の外国人介護職の受け入れと首都圏の高齢者の地方への転出などを中心とした提言が話題になっています。
http://www.policycouncil.jp/
 
自分の描いている将来像とは全然違うのですが、こうした議論はある観点からは出てくるだろうと思っていました。実は5月の4年生の実習の時に同様の観点から学生と議論していたのは、もっと過激かもしれないものでした。
 
突き詰めた話、コミュニケーションがほとんど取れない寝たきりの高齢者の方には、フィリピンの元クラーク空軍基地があった空港(が思いつきましたが)の敷地内に高齢者施設を作って、温暖な気候で、日本と同レベルの教育や研修を受けたフィリピン人の介護職員にケアを提供してもらう。日本と同レベルかやや低いぐらいの賃金をキープして、文化的に異なる日本への長期滞在と言葉に関するストレスを考えれば、介護職員の定着率もよいはず。また空港の敷地内までであれば、首都圏在住の家族がパスポートなしでも渡航できるぐらいの扱いにしてもらえれば、きっと茨城空港の活用度も高まるし、国内の地方都市に転出するよりも便利かもしれない。
ドラマの影響でドクターヘリにのるフライトナースが人気になったけれども、10年後のフライトナースは高齢者を外国に安全に届けるお仕事になっているかもしれない。
といったものでした。繰り返しますが、もちろん私はこうなってほしいわけではありません。現場の方には不愉快に感じる方もおられかもしれません。でも、こんな極端なことを考えてみると、私たちの看護に何が大切で、療養者さんのニーズって何なのか、見えてくるものもあり、やみくもに否定するばかりでは先も見えないのです。。

専門看護師:資料室のページを更新

専門看護師:資料室 のページに、今年度から在宅看護CNSの養成課程として認定された日本赤十字看護大学大学院を追加しました。

これで、在宅看護CNSの養成課程を持つ大学院は11カ所になりました。がん看護の71カ所には遠く及びませんが、家族支援の6か所、地域看護の7カ所を上回っている現状です。但し、教員の異動により実際に養成が行われているかどうかというのは別の問題ですので、受験を希望する方は確認をしたほうが良いと思います。

 

 

 

在宅看護学は何を教える学なのか

自分が大学院で受けた特論(講義)は、その領域の主要なトピックとその研究デザインor多変量解析の手法を15回の講義でかなり網羅的に学ぶことができるものでした。別途行われていたゼミでの抄読会で院生が提示した新しい論文なども参考にしながら、先生が毎年数本論文を入れ替えておられたが、抄読会の中でも各トピックごとにそれなりの研究の量があり、ゼミの参加者が20名もいれば、「こういうのもありましたよ」という話が結構出てきたものです。

昨夜も講義がありましたが、いざ、在宅看護学で何を教えるのかというと例年、結構悩みます。受講生が2人と少ないこと(1名の場合もあります)、かつ年齢や臨床経験年数、基礎学力もそれなりに違うということが1点。そしてCNSコースの受講者もおり、臨床での具体的な内容や政策よりの内容とするのか、これまでの研究成果を中心に講義をまとめていくのがよいのかが2点目。これらは教育を受ける側が多様であるということに起因していますが、3点目は、教授すべき学問領域の全体像が必ずしも明確でないことです。在宅看護学(もしくは在宅看護の臨床)の対象や方法、用語の定義、いずれもが国内でも相応に報告はされているものの、特に後者の2つは体系的に整理されていない部分がかなり残っています。(精神の在宅については、個人的に確認もできていない…)

最後に世界での報告との比較がなかなか難しい。看護師が自宅に訪問して緩和ケアに取り組むという行為は日本でも、米国でも行われていることは事実なのですが、研究としてみると関わっている職種や仕組み、文化は全然異なるので、アウトカムの厳密な比較は難しいし、疑問点は幾つも出てきます。

講義をしている側が何でも知っているというのは幻想ですが、3点目まではサバティカルの間に論文を書きながら、他の先生と意見交換しながら質を上げていきたいと思っています。最後の課題についてはもっと海外に出ていった方が早いのかもしれませんが、今回は外国の文献を読み漁って気になるところを明確化することはしてみたいと思っています。

 

在宅での特定行為に向けて

保健師助産師看護師法の改正に伴い、10月から看護師による特定行為の研修が始まります。

これに関わっておられる方が周囲に多くて、なかなかコメントしづらい話題ではありますが、より良いものにしていくには議論を継続していくことが大切だと思うので、現時点での考えをまとめておきます。(認識の誤りも含めてご意見をいただきたいです。)

この話題にあまり詳しくない方は、いくつかのサイトをご覧になるとよいと思います。

昨日、週刊朝日の「特定看護師に「実情に合わない」の声 在宅医療どうなる?」という記事が.dotというサイトに掲載されていました。

見出しには「特定看護師」と書いてありますが、特定看護師という資格ができるわけではありません。10月から始まる研修を受けた看護師は医師の包括的な指示の下で、これまで医師でなければしてはいけない、もしくは明確ではなかった行為を看護師も行ってよいという制度になります。

記事の中でちょうど春に東大の看護の懇親会で真田教授からコメントを求められた時にお答えしたことと同じことを聖路加の菱沼先生がまとめられています。

ーチーム医療の推進というより医師の人手不足を補う内容に終始しています。看取りを含め、これから在宅医療には看護師にもっと踏み込んだ内容が求められていたのではないか。たとえば死亡診断などは、今後切実な問題になるはずです。

将来的に在宅で必要とされうる行為として死亡診断(またはその事前段階の認証)といったことを、数年前に在宅CNSの部会の意見として看護系大学協議会から問い合わせがあった際には回答に盛り込んでいただきましたが、残念ながら今回の行為には入りませんでした。確かに死亡診断は医師でなければできない重要な行為ではあるのですが、医師がすぐそばにいる環境ではない在宅では、死後硬直のタイミングなどもあり、死後のケアをすることと絡んでくる内容なので、議論してほしいと思っていました。

今回の特定行為の中には、薬剤量の調節のように医師との協働の中で在宅ではすでに行われてきたこともあり、病院と在宅では患者の状態もリスクに対応できる状況が違うので、医療行為でまとめることには若干無理があります。更に病院では、組織としての問題意識やイニシアティブがあれば、一体的に動けますが、在宅ではたくさんの医師と連携して動きますから、特定行為の実施を導入する際にはかなりの労力を必要とするだろうと思います。「チーム医療の推進」をテーマととする検討会の結果にしては医師の協力の義務化といった話がないようなので、在宅の看護師が研修を受けても無意味にならないのかという懸念があります。

また10年間で10万人を養成するという話が出てきたため、現場の看護師が減ることにならないのかであるとか、研修の内容が形式的なものになるのではないかといった懸念もあります。

以上のことから、在宅医療・看護においては、まだまだ検討課題の多く、運用の状況を注視し、必要な修正を加えていく必要があると思います。少しネガティブな指摘が多かったかもしれませんが、この議論のために医療界全体で膨大な時間と労力が注がれているので、活用できるところは活かしていきたいと思います。

なお日本在宅看護学会で、特定行為に係わる看護師の研修制度」と在宅看護での活用と題するセミナーを6月27日開催する予定だそうです。講師として、厚生労働省から習田由美子氏、また試行事業に参加した現場の管理者からの発表もあるようです。関心のある方はご参加されるとよいのではないでしょうか。

白衣を捨てて街に出よう!