地下鉄サリン事件から20年

20年前の私は大学3年生でした。

1月に阪神の震災があり、看護資格をもつ編入生の有志の皆さんは春休みを利用して実際に支援に行ったりしていました。
僕はこの日はアルバイトで訪問していた障害のあるお子さんの通学支援のために愛育養護学校のある広尾で待ち合せのために通学時間よりは少し遅れて東横線に乗りました。
普段なら中目黒から日比谷線に乗りかえるわけですが、事件が起きた後で(その時は理由はわかりませんでしたが)地下鉄はすべて止まっていて、とりあえず渋谷に出てバスで日赤医療センターに行き、広尾駅に向かったところで、クライアントと待ち合わせができず、連絡を取ったところ急病で通学は取りやめになったということでした。
午後は大学で山崎先生の研究のお手伝いをする予定だったので、東大に向かおうと思いましたが広尾駅には状況を理解できない外国人が不安といら立ちで集まっていました。駅員さんに尋ねたところ、何かの爆発があったみたいということ、当面動きそうにないということだったので、拙い英語で外国人たちにそのことを伝えてから渋谷駅に戻り東大に向かいました。

東大に入学するときには自分自身が医療職になろうとは全く思っていなかった私にとって医療職への階段を歩み始めていた時期に、こんなに簡単に人が亡くなってしまう出来事が二つも続いて、少し心がぐらついたことも事実ですが、編入生の活動を見ていて、今の自分にはできない、たとえ小さい力でも確実に何かを変えられる人たちであることを尊敬できたし、懸命に人を助けようとする人たちの姿を見て臨床に出てみようという気持ちを強くした出来事だったと思います。

明日卒業する卒業生の皆さんには、入学式が開けなかった4年前の震災とその後がどのように映っているのでしょう。この4年間の学修のなかで何か心を打つものがあったでしょうか。
勝俣先生がお書きになられている状況からも、大きな事件、震災はその時だけではなく、その人の一生の中に残ることだと思います。残念ながら看護職はそのすべての期間に寄り添うことはできません。だからこそ、患者さんに出会えたそのタイミングに「もっとずっといてほしい」と思っていただけるように、自分のベストの看護が提供できるよう日々の研鑽を忘れずにいてほしいと思います。
ちょっと早いけれど、私からの手向けの言葉ということで。
(Facebookへの投稿を移しました)

参考:僕はサリンサバイバー:腫瘍内科医 勝俣範之のブログ

文部科学省の新設大学等への監査

文部科学省から新設大学がその後きちんと運営されているのかや、法人の規定が改訂された大学の問題点についてのチェック内容が公表されています。

新設の大学で情報が少ないと感じておられる受験生の保護者の方は、大学とは違う第三者の指摘も参考にして大学に尋ねてみるというのもよいかと思います。
もちろん大学側にも事情があり、「負債が多い」といった指摘には病院の建物を建て替えや設備投資の後で受験生にはメリットが高い場合も考えられます。

一般に看護系の大学では、「是正意見」という強い意見がついているものが他の系よりも多く見られ、「教員が定着しない」「不適格な教員がいる」(明日は我が身?)といった深刻な指摘も散見されています。新設大学よりも、それらの大学に教員を引き抜かれた中堅どころの大学が大変という話を耳にしていましたが、新設大学でさえ大変になってきているのが現状なのですね。
先日の看護系大学協議会の総会でも、大学院でのNPコースの話が出てきた一方で、文科省の担当者からは基礎教育の質の低下(正確にはばらつきでしょうか)が指摘されていたと伺っています。
全体の話はともかく私も在宅看護の部分で教育の質保証につながるような活動は続けていきたいと思います。

参考:講義は中学レベル、入試は「同意」で合格 文科省がダメ出しした“仰天大学”とは? (withnews) – Yahoo!ニュース.

高齢者マンションでの拘束

北区で高齢者向けマンションにおいて高齢者を拘束していた問題で、北区から運営法人に対して改善の指導が入りました。

現状では、こうした入居形態についての指導は法的根拠がないので、訪問を行っていた訪問介護事業所と居宅介護支援事業所(ケアマネ)に対しての指導ということになるのだと思います。
拘束は医師の指示があったということですが、私が知る限り訪問介護やケアプランにおいて、医師が指示をするということは喀痰吸引等を行う場合以外ではなく、あくまでも医師が意見を示しケアマネや介護職が自律的に判断するものだと理解しています。(違うかな?)

追記:最終的に身体拘束を行う場合には医師の指示が必要となるのは当然なのですが、その前のどのようにケアプランを立て、介護計画を立てるのかという時点での話です。

今回の場合は、指示をした医師と運営する法人が同じであったため、処分が容易であったと思われますが、担当していた医師が別法人であった場合の責任の所在などはなかなか危うい感じがします。

高齢者の居場所の問題と介護職の確保の問題が解決しないと、こうした現状を提供側も受給側も甘受しなければいけないということになります。先日、中学生相手に「高齢社会の問題は僕らの世代で何とかしたい」と話してきたのですが、もちろん私一人で解決できることではなく、「私の老後をどうすごしたいか?」を自分目線で考えてもらう必要があります。

ソース:高齢者マンションで虐待:中日新聞

訪問看護に関する介護報酬の改定案

第119回社会保障審議会介護給付費分科会資料が公開されました。
主な改正点は3か所

基本報酬について

訪問看護ステーションでは若干の減算となり

時間数改定前改定後
20分未満318単位310単位
30分未満474単位463単位
30分以上1時間未満834単位814単位
1時間以上1時間30分未満1144単位1117単位

病院・診療所からの場合は、逆に増額となり

時間数改定前改定後
20分未満256単位262単位
30分未満383単位392単位
30分以上1時間未満553単位567単位
1時間以上1時間30分未満815単位835単位

病院からの報酬の増額については、病院・診療所からの訪問看護の供給を促すということですが、この程度の変化でどの程度供給量が増えるのかを見守りたいと思います。

中重度の要介護者の在宅生活の支援の評価

看護体制強化加算 300単位/月を新設。この算定要件は

  1. 算定日が属する月の前3月において、指定訪問看護事業所における利用者の総数のうち、緊急時訪問看護加算を算定した利用者の占める割合が100分の50以上であること。
  2. 算定日が属する月の前3月において、指定訪問看護事業所における利用者の総数のうち、特別管理加算を算定した利用者の占める割合が100分の30以上であること。
  3. 算定日が属する月の前12月において、指定訪問看護事業所におけるターミナルケア加算を算定した利用者が1名以上であること(介護予防を除く)。

訪問看護ステーションからのリハ職の訪問の見直し

時間数改定前改定後
1単位318単位302単位

訪問リハビリ事業所からの訪問リハと類似した実態にあるということでの減算のようですが、訪問リハ事業所とどの程度地域的に重複があるのか、調べてみたいですね。

ケアプランは共有できてこそ

在宅看護の実習指導を毎年行っていて、同じようなことを何度も説明することは厭わないのですが、現状が改善しないことにはモヤモヤした感じがするのです。

訪問看護は介護保険のサービスとして提供される場合には、ケアマネージャーが作成するケアプランに位置付けられ、事業所にも送付されてきます。

しかし、介護保険サービスの利用者でもいくつかの疾患や状態に該当する場合には医療保険から給付されます。ケアプランの「サービス内容」の記載には、介護保険サービス以外の制度のサービスや家族などによるインフォーマルなサポートも含めて、「全体として、どのようなサービス体制が組まれているのかを明らかにすることが重要である。」(介護サービス計画書の様式及び課題分析標準項目の提示について 別紙1)となっているので、医療保険からサービス提供される場合でもケアプランに記載されている場合が多いのですが、訪問看護ステーションにケアプランが送付されてこないケースがたいへん目立ちます。

現行では、利用者と介護保険サービスの事業者については遅滞なく送付することになっていますが、他の制度の事業所に対しては義務と明記されていません。しかし、こうしたケースでは多くのサービス・事業所が導入されているケースが大半を占めます。せっかく作成した自分のケアプランは紙の上に書かれているだけでは意味がなく、共有されてこそ活用されるでしょうし、利用者さんのメリットとなるはずです。

4月の介護報酬の改定では報酬の引き下げばかりがクローズアップされていますが、こうした問題や介護予防事業の部分など内容面でも注目していく必要があると思います。
基礎から学べる「ケアマネジメント実践力」養成ワークブック

白衣を捨てて街に出よう!