ALS患者さんへの嘱託殺人が行われたというニュースが流れています。まだ真相がわかりませんので今後の状況を見守らなければなりませんが、刑事事件とは別の医療や福祉の視点で確認しておきたいことがあります。
私は今回の患者さんの「死にたいほど、辛い」という気持ちを雑に扱ってはいけないと思っています。私にそれがわかるとは言いませんが、患者さんへの訪問看護やその他のお付き合いの中で、どれほどのものか想像しうるものは持っていると思っています。また、病院での臨床で亡くなった方たちは、人工心肺を回しながら心電図がフラットになって機械を止める様な方々でした、そうした方々のそばにいて、自分が患者だったら「もういいよ」って人工心肺のスイッチをOFFしたいような気持ちを持つこともありました。
看護では「患者に寄り添う」ことが大事と教えます。しかし、ギリギリまで寄り添っても、やはり他者は他者であり、医療職がその一線を超え自律性を損なうことの危険も知らなければなりません。
現時点で言えることとして、今回の事件で行われてきたことは、微力ながらもこの20年、当事者と共に多くの医療職・関係者が取り組んできた神経難病患者さんに対しての生を支援する取り組み、例えば、難病法の成立、障害者サービスの拡充、早期からの緩和ケアの導入、外出支援やコミュニケーションの支援の拡充などとは、全く異なる次元のものであり、このような異次元の対応を契機に尊厳死を考えるとかそういう動きが出てくることには強い違和感を覚えます。こういう問題は現場での地道な活動の成果に基づいて、政治が道筋をつけていくことであり、上からの議論には何か別の意図が含まれている可能性を感じます。
是非、落ち着いた議論になることを願っています。