「在宅看護の実習ガイド」を発刊しました

既にFacebookでは簡単にご紹介しましたが、Amazonにも登録されたようなので、ブログの方で少し丁寧に紹介をしておきたいと思います。

今回の「在宅看護の実習ガイド」は2015年の11月に「コミュニティケア」の臨時増刊号として発行された「看護の本質を体験できる 訪問看護師・教員・学生すべてが成長できる”在宅看護”実習」が完売してしまったことを受けて、改めて書籍化をというご要望を出版社の方から頂き発行したものです。

これにあたって、前回も編集に関与した私、柏木聖代先生、川村佐和子先生に加え、2014年頃から定期的に在宅看護体系化研究会と称して集まっていた其田貴美枝先生、西崎未和先生、原口道子先生に加わって頂き、6名で再度内容を検討致しました。

その結果、前回ご執筆頂いた先生方には、データを最新のものに更新していただいたり、若干の手直しをお願いしたほか、新たに順天堂大学(静岡)の小川先生には生活モデルを意識した実習の展開を、大阪府立大学の中村先生には、12月の看護科学学会で報告されていたルーブリック自己評価表のご紹介、地域と大学との結びつきの強さでも注目されている藤田保健衛生大学の北村先生にも活動をご紹介頂き、また学科や地域を上げて取り組んでいる群馬大学の活動についても牛久保先生にご紹介頂くなど、更にバラエティに富んだ内容となっています。また清水、其田、西崎は所属機関での実習の状況についても原稿を執筆しました。

これらの報告の豊富な情報・アイディアを、教育機関や実習施設の皆さんが活用して頂けるものになっていると思いますし、今回は改めて最終章で在宅看護実習の可視化や言語化に資する4つのSTEPを私達なりにまとめてみました。

今後、国の指定規則などで在宅看護や地域包括ケアに関連する実習がどのような質と量で求められるものになるのかという懸念も抱いておりますが、私たちは常に先をみて、より良いものを学生たちに提供してゆく使命があると思います。そうした主体的で優れた取組みを国の制度が追認し、支えて頂けるものだと考えています。

教育効果を測定していくような研究は私は得意にしてはいませんが、学生に在宅看護の興味深さを伝えていきつつ、そうした評価についても検討していかなければならないのかなと考えています。(一応、それらに関連した内容を昨年、科研に申請したのですが、どうなることでしょうね。)

ぜひ皆様、お手にとってご覧になってみてください。

新・生き方としての健康科学を刊行

これまで、大学院時代の研究室の先輩方がアイディアを出され、大学の教養レベルの健康に関する教科書として好評を博し第5版まで改訂が進んだ「生き方としての健康科学」が「新・生き方としての健康科学」として4月に刊行されます。

私も新版の発行にあたり、著者の一人に加えていただき、医療と社会的なルールについての章を担当し、移植医療について執筆しています。また生殖医療やゲノムの部分については、同級生だった山口大学の藤村一美さんに協力していただき、かなり充実した内容となっています。コラムや図表も多めに配置し、教養レベルの分かりやすさを意識しながらも私達の健康と生活を多面的に捉えた物となっていますので、どうぞ一度お手にとって見てください。

国家試験から今後の教育の方向性を考える

今年の国家試験は「出題傾向が変わった」的な反応が受験生から見られたようで、ネットニュースでも取り上げられたりしていました。

「在宅看護論」に該当する出題は14問ぐらいでしたが、少し考えることになった出題がありました。

 Aちゃん(6歳、女児)は、重症の新生児仮死で出生した。誤嚥性肺炎で入退院を繰り返しているため、今回の入院で経鼻経管栄養法を導入し、退院後は週1階の訪問看護を利用することになった。現在は四肢と体幹の著しい運動障害があり、姿勢保持が困難で、移動及び移乗は全介助である。声かけに笑顔はみられるが、指示に応じることはできない。

母親は「Aは来年の4月には小学校に入学する年齢だけど、入学に向けてどうすればよいのか分からない」と訪問看護師に相談した。
訪問看護師が行う援助として適切なのはどれか。

  1. 自宅に教員を派遣できる小学校に連絡する。
  2. Aちゃんが入学できる特別支援学校を紹介する。
  3. 父親に仕事を調整してAちゃんの送迎をするよう勧める。
  4. 教育委員会に小学校入学に関する相談をするよう勧める。

学齢期前の障がい児の就学に関する出題は、小児の訪問看護に関わる看護師の中では大切な事項であり教育機関との連携のなかでの発達を考える上でも良い問題だと思います。その一方で、これが全ての看護学生が知るべき知識という位置付けだといわれると、教育に力を入れている私達でも自信が持てません。

国家試験出題基準の見直しが予定されているようですが、今後、場面は在宅だが内容は他の専門領域に関する出題という形が増えるようであれば、教育の仕方も色々変えていかないといけないのかもしれません。

旧サイトを閉鎖します

旧サイトの情報も閲覧できるようにしてきましたが、サイトを表示させているCMSのシステムが最近、更新されなくなってきたため、セキュリティの観点から、閉鎖する方向で考えています。

旧サイトの情報でレストアできるものは、こちらのサイトに活かしていこうと思いますが、多少手間がかかりますので、責任を持って対応できるとはいい難い状況ですので、ご容赦ください。

避難解除地域で一人、訪問看護を提供する選択肢

卒業生の訪問看護師の方から、ご相談をいただきました。

同じような質問をお持ちの方もいると思いますし、自分の理解に誤りがあるかもしれないので、ブログに公開する形でお返事します。

訪問看護ステーションの開設には常勤換算で2.5人の看護職が必要となります。規制緩和とのからみで、この縛りを1名にしたらどうかという議論は有りましたが、サービスの質の維持といった観点から現在は立ち消えとなっています。

質問は福島で放射能汚染がある東京23区の2/3ぐらいの広さの地域に今後避難指示が解除され高齢者を中心に住民が戻って来ると想定されるが、地域には非常勤医師が時々来る診療所が一箇所、周辺の市には病院がある程度だそうです。こうした場所で訪問できる看護職が1名だとして、どうしたら訪問看護を提供できるのか?ということでした。

最終的には自治体の判断になるので、自治体と相談してくださいとしか言いようがないのですが、制度的な選択肢としてはいくつか考えられます。

  1.  地域の診療所もしくは近隣の病院の協力を得て、医療機関からの訪問看護を提供する。
    (医師との連携、指示も必要なので、最も無難なところ。)
  2.  理解のある周辺の訪問看護ステーションと相談をして、当該地域にサテライトを設置する。
  3.  介護保険法42条の規定を用い、特例居宅サービス費
    (介護保険法第42条の仕組みを用いる。自治体の指定が必要となること、法制度的には離島や過疎地域に限定されているため、そうした地域に該当するかどうかの判断が必要なこと、医療保険からの給付ができないことなどが課題)
  4.  よくわからないけど、政治家に頼んで「特区」や「例外」を作る。
    (震災直後から数年の間は被災地で例外的に一人開業が可能でした。ただ、今はある程度周辺の医療介護体制が立て直されてきているので、上の制度を使うことになりそう)

こんなところだと思います。

 

白衣を捨てて街に出よう!