公衆衛生学会総会は公衆衛生全体の動向を知ると共に、東大の同窓の皆さんの活躍を目にする機会でもあります。今年の総会は、昨年の忙しさで演題発表はできませんでしたが、いくつかの目的をもって1日だけ参加してきました。
実務的なところでは、来週の在宅看護学会に向けて、関係の先生の研究を拝見しつつ、今後の在宅看護のアカデミックな部分をどうやって進展させていくのかというお話をしてきました。
横浜市立大の柏木先生、筑波大の田宮先生のグループでは、全国の介護保険レセプトのデータを集めた分析を始められるということで、訪問看護に関する基礎的な発表がありました。医療保険では保険者機能の強化が謳われて、レセプトやDPCデータの活用が進む一方で、介護保険レセプトを使った報告は、田宮先生のグループ以外では見かけたことが無く、法的な規制などがあるのかと、お尋ねしてみました。
大きな障壁としては、研究で使えるような形のデータセットにするのがものすごく大変だというお話でした。今後、自治体がデータに基づいて介護保険事業計画を作るうえで、私たちのような公立大学が協力しながら、こうした研究を進める機会が増えると思いますが、保険の改定と共に、データの順番が変わってしまうことや、自治体の介護保険の担当者が慣れているかどうかといったあたりが課題になりそうです。
厚労省ではデータヘルス計画というものを掲げていますが、介護保険レセプトに限らず、行政機関のデータベースを作る際に2次利用のことを考えた設計であるのかどうかと言う点が、コストダウンの面からもとても重要だと思います。私たちが行政に申請・提出する書類の情報がGISを使ったり、継時的変化が分かるような形で整理されていくかどうかというのが、自治体の政策の質や費用対効果の面でもじわじわ影響を与えていくように思います。