自分が大学院で受けた特論(講義)は、その領域の主要なトピックとその研究デザインor多変量解析の手法を15回の講義でかなり網羅的に学ぶことができるものでした。別途行われていたゼミでの抄読会で院生が提示した新しい論文なども参考にしながら、先生が毎年数本論文を入れ替えておられたが、抄読会の中でも各トピックごとにそれなりの研究の量があり、ゼミの参加者が20名もいれば、「こういうのもありましたよ」という話が結構出てきたものです。
昨夜も講義がありましたが、いざ、在宅看護学で何を教えるのかというと例年、結構悩みます。受講生が2人と少ないこと(1名の場合もあります)、かつ年齢や臨床経験年数、基礎学力もそれなりに違うということが1点。そしてCNSコースの受講者もおり、臨床での具体的な内容や政策よりの内容とするのか、これまでの研究成果を中心に講義をまとめていくのがよいのかが2点目。これらは教育を受ける側が多様であるということに起因していますが、3点目は、教授すべき学問領域の全体像が必ずしも明確でないことです。在宅看護学(もしくは在宅看護の臨床)の対象や方法、用語の定義、いずれもが国内でも相応に報告はされているものの、特に後者の2つは体系的に整理されていない部分がかなり残っています。(精神の在宅については、個人的に確認もできていない…)
最後に世界での報告との比較がなかなか難しい。看護師が自宅に訪問して緩和ケアに取り組むという行為は日本でも、米国でも行われていることは事実なのですが、研究としてみると関わっている職種や仕組み、文化は全然異なるので、アウトカムの厳密な比較は難しいし、疑問点は幾つも出てきます。
講義をしている側が何でも知っているというのは幻想ですが、3点目まではサバティカルの間に論文を書きながら、他の先生と意見交換しながら質を上げていきたいと思っています。最後の課題についてはもっと海外に出ていった方が早いのかもしれませんが、今回は外国の文献を読み漁って気になるところを明確化することはしてみたいと思っています。