抄読:特養と老健からの入院そして病院死

領域会議で自分の発表の機会があり、論文のクリティークとして、以下の論文を紹介しました。

Jeon B, Tamiya N, Yoshie S, Iijima K, Ishizaki T. Potentially avoidable hospitalizations, non‐potentially avoidable hospitalizations and in‐hospital deaths among residents of long‐term care facilities. Geriatr Gerontol Int 2018; 18: 1272–1279. https://doi.org/10.1111/ggi.13458

 

論文を選んだ理由としては、以下のようなものがあります。

  1. 日本の介護保険データと医療保険のデータを突合すると何がわかるのか・どのへんが難しそうなのか
  2. マルチレベル・ロジスティック回帰ってどんな分析
  3. たまにはちゃんと英文読もう…英語試験もあるし…(冗談です)

論文はオープンアクセスなので、内容については読んでいただければと思いますが、気になったところとすれば、1.の観点からはデータの突合だったり、項目やサンプルの使える・使えないの峻別が大変なことが垣間見えます。既存のデータからわかることしか言えないので、今回だと併存症の中での重症度や合併症の有無などはわかりません。分析をするには、それなりの技術がいりそうですね。

2.の観点から言うと、一般線形モデルのマルチレベル分析[1]個人的には、日本語だとこの論文(筒井淳也、不破麻紀子:マルチレベル・モデルの考え方と実践、理論と方法、23(2)、139-149,2008) … Continue readingの論文は読んだことがありましたが、ロジスティック回帰でも基本的な考え方は同じのようですね。今回はfacility unit間での関連性を顧慮してモデルの選択をして、level 2にはrandam interceptのみを投入したモデルにしています。ちなみに千葉県の人口40万人ぐらいの市のデータということで、私の推測正しければ、現時点で特養が24か所、老健が8か所でした。あとこの固定効果の値をオッズ比と呼んでもよいのか、確認しよう。

考察では、「特養では2つ以上の既往歴があるとNon-potentially aboidable hospitalizations が増えるのに対し、老健では、Potentially aboidable hospitalizations が減少する」という相反するような現象について、定期的に治療や処方ができる常駐の医師がいるという特性の違いによるものと述べられています。その他にも理由を説明しながら慎重な解釈が必要とされているのですが、老健であれば看護師も多いので、医師の治療とともに合併症に合わせた予防的な介入が行われたりしているのかなとも思いました。

Limitationでも指摘されていますが、高齢者の心身状態や施設利用のしかたが多様化している中で、どのくらいの期間、どのような時期のデータを用いるのが代表性を持った結果といえるのかは結構大事だということを再確認したのと、PAHの理由として呼吸器合併症や泌尿器合併症が多いということがデータでも明確に示されたので、今後は予防的なケアの質とも絡めたり、医療費・介護費の縮減にどうつなげていくのかといった方向に進むのかなと思いました。

勉強になりました。

Notes

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